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「ヨコ割り」指導の限界

二宮清純


 日本のスポーツ界が「タテ割り行政」にむしばまれている点は、このコーナーでも何度か指摘してきた。さらに言えば、日本のスポーツは「ヨコ割り」にも悩まされている。これが弊害となり、選手の成長を阻んでいる面が多々見受けられるからだ。

 具体的に言えば、日本では小学校、中学校、高校、大学、そして社会人の指導者がすべて別々で連携がとれていない。

 たとえばAという少年が地元のスポーツ少年団に入って野球を始めたとしよう。ピッチャーの素質があったAは速球を武器に三振の山を築いた。コントロールには難があったが、監督は彼を大きく育てようとフォームをいじらなかった。

 Aは中学に進学し、チームの中心投手となった。ただ時々、四球を乱発するクセが顔をのぞかせ、自滅してしまう。そこで野球部の監督はAにフォーム改造を命じた。豪快なワインドアップをノーワインドアップに変え、腕の位置もスリークォーター気味にした。単に力でねじ伏せるのではなく、変化球も混ぜた投球スタイルを教えたのだ。

 中学で名の知れた存在となったAは甲子園出場を目指し、野球強豪校に進学する。しかし、他の同級生ピッチャーたちは皆、勢いのあるボールを次々と投げ込む一方で、中学校でこぢんまりとまとまってしまったAは本来の持ち味を失ってしまった。結局、彼は控え投手として不本意な高校生活を余儀なくされる――。こんなケースは数えられないほどある。

似たような状況は大学や社会人、果てはプロに入っても起こりうる。指導者が変わるたびに教えるポイントも変わり、使われ方も変わるため、選手たちはとまどいの中で貴重な時間を浪費してしまうのだ。せっかくプロに入った好投手が、いつの間にかフォームが変わり、消えていったのを何度見たことか。

欧米では地元のクラブで一貫した育成システムを組んで選手を指導しているところが多い。医療カルテのように、その選手がこれまでに取り組んだトレーニングや身体面の特徴や精神状態、故障歴などがまとめられ、指導者はそれを参考にする。そして、短期的な結果を求めるのではなく、長い目で選手を育てている。

夏はインターハイ、甲子園など子供たちのスポーツが真っ盛りだ。将来有望なアスリートの力をさらに伸ばすためにも、「ヨコ割り」指導からの脱却は欠かせない。


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